剣を交わらせて

 俺達はついに………奴を、エクスデスを追い詰めた。
 はずだった………。


「奴は不死身か!?」
 ガラフが呻いた。
 どんな攻撃を仕掛けようと、奴は甦る………それがたとえ、俺の剣技やケルガーの必殺技───ルパインアタックだとしても。
 文字通り、きりがなかった。
「ここに封印するしかないな」
「ああ………」
(何だと!)
 俺はゼザとケルガーに喰ってかかった。
「ここに!? 自分達の世界の邪悪を別の世界に封印するというのか? 俺は反対だ!」
「だが、他にどうしようもあるまい!」
 確かに正論だ。
 だが………正論だからこそ、俺は認めたくはなかった。
 認めてしまえば、彼女にいずれ厄災が降り掛かるかもしれない。
「奴が復活するぞっ!」
「くっそーっ」
 言いながら、ガラフとケルガーは走り出していた。
 少しでも、再生を遅らせるために。
「やむを得まい! ここに封印するぞ!!」
 ケルガーが炎のクリスタルの欠片をかざした。
 それに習い、ガラフとゼザが土と水のクリスタルの欠片を掲げる。
「ドルガン。ここに集まるクリスタルの力を使うには、4人の心を合わせなければ!」
 俺は俯いた。
 目の前には、仲間と………やっとのことで追い詰めた、宿敵の姿。
 分かっている。
 やらなくてはいけないということがある、と───。
「ドルガン!」
 俺は、覚悟を決めた。
 キッと宙を見据える。
 そして握り締めていた、風のクリスタルの欠片を振りかざした───。


「なっ! ドルガン………嘘だよな!?」
 俺は嘘を言ったつもりは、ない。
「俺はこの世界に残ってエクスデスを監視し続ける」
 それがこの世界に、そして彼女に対する俺の責任だからだ。
「なぁ、ゼザ。お前からも何か言ってくれよ」
「………………」
「………頼む」
 ケルガーが頭を下げる。
 ゼザは読んでいた分厚い本を閉じ、俺の方を向いた。
「ドルガン、それはどうしても譲れないんだな」
「………ああ」
「ならば、それを俺の前で証明してみろ」
 ゼザの鋭い目が俺を射抜く。
(………決闘か、面白い)
 密かにだが、前々から1度ゼザとは本気で戦ってみたいと思っていた。
「まさか、本気でやる気か?」
 ガラフが止めに入ろうとするのをゼザが制止した。
「ドルガン、お前が勝ったらここにお前は残る。俺が勝ったらお前は俺達と一緒に元の世界に帰る。これでいいな?」
「ああ」
 俺は負けられない。
 彼女のために。
 そしてこの世界のために───。
「もう止められねぇな。ガラフ、オレ達はこの戦いを見届ける義務がある」
「………だな」
 かくして、俺はゼザと戦うことになった。
 『氷のゼザ』の二つ名を持つだけあって、本気のゼザは冷静を通り越して冷徹ですらある。
「行くぞ、ドルガン」
 エンハンスソードという、魔力の込められた大変珍しい曲刀をゼザが振りかざす。
 それを体を開いて躱し、愛用の剣グレートソードで横に薙いで反撃する。
「燃えろ、ファイガッ!」
 ファイア系最強魔法を出し惜しみせず使ってくるとは。
 さすがはゼザだ。
 俺はファイガによって作り出された炎の固まりをバックステップで避け、高く跳躍する。
「俺は、負けられないっ!」
 落下時に剣を振り下ろす。
 ゼザがそれを避ける。
 無論、ゼザが回避する時のことも対策済ではある。というか、むしろそれを狙っていた。
 俺は剣圧でゼザを吹き飛ばした。
「我に恵みを、ケアルガ!」
 ゼザは、回復魔法が使える。
 それは、俺の方が圧倒的に不利だということを意味していた。
「ドルガン。お前の意志の強さを、これで確かめさせてもらう」
 ゼザが魔法剣を使う時。
 それは本気の上を行く本気の時だ。
「これで、終わりだ」
 ゼザがエンハンスソードに属性付与(エンチャント)したブリザガ剣を大上段に構える。
 俺は静かに目を閉じた。
「なっ! ドルガンッ………!!」
 ケルガーもガラフも俺が何をするかは知っているはずだ。
 だが、それでゼザを退けられるかはさすがに不安なのだろう。
 ましてや、ネタは割れている。
「ゼザ。俺は、負けられない。どうしてもだ」
 心の眼───俺は目をつぶったまま、ゼザの猛攻を躱し続けた。
「そこだ!」
 そしてゼザの曲刀が、宙に舞った。


「また、腕を上げたな」
「そうか? 俺はギリギリだったと思うが」
 俺は勝った。
 だが、何か虚しい。
 これが………正しい選択だったかどうかは俺には分からない。
 ガラフが、ケルガーが、そしてゼザが。
 辛い、顔をしている。
「お別れだな………」
「オレ達は、たとえ離れていようとも」
「………ああ、仲間だ」
 ガラフが目を赤くし、ケルガーが右手を差し出す。
 俺はその手を握った。
 ゼザが、笑った。
「ドルガン。お前は護るべきものを見つけたんだな」
 見抜かれていたか。
 やはり、ゼザはただ者ではない。
「ああ………すまん」
「いや、いい」
 ガラフもケルガーも俺にとってはもしかしたらそうかもしれない。
 だが、俺が本当に尊敬していたのは………ゼザ、あんただ。
 回転が素早く、切れる頭。
 そして、多彩な攻撃。
 俺にはないものをたくさん持っているから、俺はきっと憧れたんだろう。
「大切にしろよ………ずっと」
「ああ」
 道が別れても。
 俺達は、仲間だ。
 だから絶対に、俺は忘れない。
 3人と共に旅した、このことを───。

後書き

 某サイト様のチャットに参加していた時に頂いたネタを元に書きました。実は初めて転載した暁小説であります。ドルガンが最後に心眼を使うことは決定済でした。それから作中では特に語っていませんが、私の中ではゼザはわざとドルガンに負けたということに決めています(その辺りはゼザsideを書くことがあったら表現しようかと企んでおります(笑))。個人的にはドルガンがカッコよくて素敵です。ドルガンが想う「彼女」はもちろんステラさんですw きゃ〜〜vvv つーわけでドルステSSの「すべてはここから」と少し話がリンクしていますので、宜しかったらそちらもご覧下さいませ(宣伝)

Back Home Next

inserted by FC2 system