いけない愉しみ

 オレはクラースの旦那に会いに行った。1度家に来るといい、いい物を見せてあげよう、と旦那が前に言ってたから、オレはありがたくそうさせてもらった。
「チェスター、よく来たな。丁度、今はミラルドも出掛けいてる」
 旦那は快くオレを出迎えてくれた。
(初めて来たけど、旦那の家はでかいな………)
 早速オレは居間を通り抜け、クラースの旦那の私室に邪魔した。
「旦那も人が悪いな」
「お前も一緒になって見てるんだから共犯だ、共犯」
 オレ達がミラルドさんの目を盗んで何を見ているかは敢えて語らない。
 ただ、男というのはクレスのような真直ぐ過ぎる奴ばかりじゃない、ということだ。
「なっ、いいだろ………」
「ん、そうだな」
 たまにはこういう愉しみがあったっていい。あのおてんばハーフエルフ娘には怒鳴られそうだがな。
「それにしても旦那、よくこんなに隠しておけるな」
「前に1度、ミラルドに見つかってこっぴどく叱られたよ」
 オレだったら部屋に隠しておけない。昔、アミィに見つかりそうになって慌てて言い訳をしたのを、今でもはっきりと覚えている。
 でも、こればかりは男の性だからどうにもならない。
 オレとクラースの旦那はそのままこっそりとそれを見ていた。


 数時間後───。
 すっかり気が弛んだオレと旦那は部屋の外から伺っている人物がいることに気がつかなかった。
 バタンッ!
 勢いよくドアが開く。
「クラース! そんなにこそこそと一体何を見ているのかしら?」
「うっ、ミラルド………」
 ミラルドさんの後ろにいるのはもしかして………?
 オレはその人物に恐怖を覚えた。
「チェ・ス・タ・ーッ! 何やってんのっ!!」
「あ、いやこれはだな………」
 オレは慌てて弁解しようとした。だが、アーチェは取り合ってくれない。
「スケベッ! サイテ〜〜!!」
「当然、これは没収させてもらいますからね!」
 ミラルドさんはクラースの旦那の両耳を引っ張りながら語尾を荒くして怒る。この様子からするとクラースの旦那がミラルドさんに見つかったのは1度や2度じゃないらしい。
「アーチェ、聞いてくれ! これはだな………」
「知らない! チェスターのバカッ!!」
 オレは右の頬に跡がくっきり残る程の平手打ちを喰らってしまった───。

「いてて………………何だ、夢か」
 目覚めてみるとそこは宿屋のベットの中だった。オレは心底ホッとした。
(もしかして最近欲求不満か………)
 つい真面目に(そんなこと考えてる時点で真面目ではないのだが)思ってしまう。
 パタンッ。
「チェスター、起きた?」
 オレは幽霊でも見たかのようにその場に凍り付いた。
「何よ、人の顔見て口をパクパクさせちゃって。失礼しちゃうわよね」
「あ、いや何でもねぇよ」
 オレは急いで飛び起きて、その場から逃げ出した。
 アーチェが不思議がっていたが、このことだけは絶対に言わねー。
 言ったら間違いなく殺される。それもビックバンやブラックホール、といった魔法で。
 オレはそう思いながら、こっそり夢の中のできごとを思い出していた───。

後書き

 友人に前にもらったネタを元に書きました。チェスターがぁ〜(爆)でも、何かいい感じです(ぉぃ)ミラルド初出演でしたが、ちゃんとクラースが尻に敷かれている部分が出せたかな(笑)元々はチェスアーにするつもりは全然なかったのですが、やはりチェスターの話を書くとどうしてもアーチェがいて欲しい、というわけでこんな形になりました。






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