あたしは走った。
ただひたすら走った。
炎に巻かれたスクールの廊下を。
(一刻も早く! 出ないと一酸化炭素中毒か焼け死ぬか………。そうなったらどっちみち助からない!)
ディールとカインのファイターコース5年生が3時間目に行っていた授業は体術───つまり、格技室にいるのだ。
格技室は地下にある。
煙で滲む目を押さえながら階段を下りようとした。
(うわっ! 煙が酷くて進めない! ………仕方ないか。魔法でなら切り抜けられるはず)
あたしはハンカチ越しに一呼吸置いた。
そして叫んだ。
「マジックウォール!」
マジックウォール───光で対象者の周囲に魔法効果を軽減させるオーラを纏わせる魔法。
………とにかく。
急いで階段を下りる。
運が悪いことにファイターコースは先生が出張のため、首席のディールと次席のカインが教師代理の役目をしていた。
(まぁ、ウィザードでもなきゃ、大人でも子供でも炎に巻かれた状態で簡単には脱出できないだろうけど………)
息を切らしながらあたしは格技室の前まで来ていた。
いくら魔法で軽減しているとはいえ、そんなに長くは持たない。持って せいぜい15分というところだろうか。
(ここまで来るのに5分………)
そもそもどうしてこんなことになったのか? それを説明するには2日程前に遡らなくちゃいけない。
そう、全ての始まりは───。
後書き
『炎の女神の夏祭り』連載開始です。リリスは慌てていますが、一体何が起きたのでしょうか? それは後ほど分かると思うので、気長に続編をお待ち下さい(笑)