第10話 新たなる大地にて!

 一行は1度エルバータへと戻った後、レッドの愛船グラン=シャイデル号とフェイの愛船ゴールデン=ファンティーヌ号を改造したグラン=ファンティーヌ号で北へと進路を取った。
 目的地は北のエルモア大陸にある、ドラゴンバレー。ここはレッドが竜戦士になるための修行を積んだ、世界でも数少ない人とドラゴンとが共存する地域である。そこのドラゴン族の長───ラーヴァに話を聞けば残りのドラゴンオーブの在り処が分かるだろう、というレッドの提案に一同は賛成した。
「ふう………風が気持ちいい」
「そうね」
 甲板でリリスとフェイが穏やかな会話をしていた。船を改造した際にモンスターを寄せつけにくくしたので何かと安心である。もっとも、リリスもフェイもこの前の一件に比べるとまた一段と強くなっているのだが。
「フェイ、下船の準備はできているか?」
「ええ、兄様」
 船を1つにしたことにより、レッドが船長、フェイとレイが副船長を務めている。
「それじゃ、行くとするか」
 いつも陽気なのは盗賊のロック。それは今日も変わらない。
「みんな、用意はいい?」
「ああ」
 一行はエルモア大陸に上陸した。ドラゴンバレーはエルモア大陸の最西端にあり、リリス達の現在地は丁度真逆の最東端。ドラゴンバレー付近の海域は急流であることと、船を着けられるような場所がないためである。
「エルモア大陸はモンスターが今までよりも強いぜ、心してかかれよ」
「うん」
 レッドの言葉に他の5人は息を飲む。確かにそこら中に強い気配を感じた。
 全員、各々の武器を手にさっと身構える。それが分かったのか、魔物側も強襲を仕掛けてきた。
「ジャイアントビースト!」
「こっちはスカーレットウイングかよ」
 ジャイアントビースト───その名の通り、巨大な虎型の獣───1体と、スカーレットウイング───まるで血を浴びたかのような紅い大型鳥───3体による挟み撃ちだった。
 リリス達はレッドの指示で二手に分かれた。リリス、ディール、レッドはジャイアントビーストに、フェイ、ロック、レイはスカーレットウイングにそれぞれ対峙する。
「鳳凰乱舞!」
「クリスタルセイバー!」
「トゥインクルスター!!」
 3乗の必殺技がジャイアントビーストを襲う。
「トラインソードッ!」
「サンドグレイブ!」
「ウォーターダイブ!!」
 フェイの電撃の精霊剣技が、ロックのサンドグレイブ───魔法銃を地面に向かって撃ち、そのエネルギーによって大地の槍を発生させる精霊銃技───が、レイのウォーターダイブ───練成術によって創られた銀槍を空中から突き刺す豪快な水の精霊槍技───がスカーレットウイングを撃墜する。
「レッドはさすがだな。オレ達の方が確かに飛び道具がある分、スカーレットウイングと戦いやすい」
「ああ、リリスとフェイを分けたのも正解だな。そうずればいざという時、回復ができる」
 レイとロックは口々にそう言う。少々余裕があるらしい。
「きゃあ!」
「くっ!」
「うわっ」
 ギガントクロー───防ぐ暇もない、巨大な体躯に似合わない疾風のごとき巨大な爪による攻撃がリリス達を襲う。
「ちっ! リリス、大丈夫か!?」
「うん」
 ディールは咄嗟にリリスを庇った。そのせいで避けきれなかった右腕からは酷い出血が起こり、ムーンブレイドが紅く染まる。レッドもまた、今の攻撃を左足に喰らったため、動きが鈍ってしまった。
(あたしのせいで2人が………)
 治癒魔法と、時魔法───2つを同時にかけねばジャイアントビーストのスピードには追いつけない。
(やってやろうじゃないの!)
 リリスの立場は後方支援。
 ディールとレッドに有利な状況を作るのがその役目、とリリスは心を決めた。
「我と共に纏うは癒しの妖精! ヒールッ!」
「我と共に進むは刻の精霊! アクティブッ!!」
 右手でヒールの魔法、左手でアクティブの魔法をそれぞれ同時に放つ。
「身体が、軽くなった」
「行くぞ、ディール!」
 治癒を受けて2人は再びジャイアントビーストと戦う。
「レッド!!」
「これぐらい………!」
 ジャイアントビーストの爪がレッドの頭上から振り降ろされようとしていた。対し、レッドはバトルアックスを使ってジャイアントビーストの爪を食い止める。レッドが明らかに不利だった。
「我と共に生きるは炎の魔神! フレイム!!」
 リリスが火炎の魔法を放ち、注意を逸らそうとする。
「ディール、今よ!」
 ディールはムーンブレイドを正眼に構え、気を練り上げる。
「セレスティアルクラスター!」
 エリーズ戦で初使用した、クリスタルセイバーの上位剣技ともいえる剣技が、ジャイアントビーストの胸元を正確に貫いた。
 巨大な咆哮を上げ、その場にジャイアントビーストは崩れていった。
「上手く行ったな」
「ああ」
 リリス達がジャイアントビーストに勝利したその頃、フェイ達の戦いもまた終局に近づいていた。
「アルティメット・スカーレット!」
 素早く回転をかけ、まるで剣舞を踊っているかのような4回攻撃を仕掛ける。
「とどめだ!」
 ロックとレイがそれぞれ左右に回り込む。
『アトミックレイン!!』
 ロックとレイの合成技が最後の1匹を粉々に粉砕した。
「楽に進ませてはくれなそうね」
「だな………」
 6人共いつになくその瞳の奥は真剣だった。
 リリスはフェイからマジックポーションを受け取って、一気に飲み干す。2つ以上の魔法を同時に使う技術はかなりの高等技術である。そのため、まだこの技術に慣れていないリリスは一気に魔力を消費してしまったのだった。
 乾いた風が、辺りを通り過ぎていった───。

後書き/サブタイトル『パーティバトル!』

 お待たせしました。第2章スタートです。どこがレッド中心なの? お待ち下さいな。最初に話した通り、レッドがかつて修行していたドラゴンバレーへと向かっているわけです。ってことは最後の方はやはりレッドが中心になってくるはず。(たぶん(笑))それぞれが得意技を繰り出して攻撃するのに集中し過ぎてちっとも情景や心理的なことを何も書いていないということに気がついたのは、書き終わってからだったという………( ̄ー ̄; ヒヤリ

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