導きの風─暁の四戦士物語─

 『導きの風』───それはいつでも俺達に道を示すもの………。


「なぁ、ドルガン」
「何だ?」
 ガラフに呼ばれた俺はぶっきらぼうに言った。
「俺達、空にいるんだよな?」
「ああ」
 何となく次のセリフが分かった俺はそっとため息をついた。
「かぁ〜〜〜やっぱり空はいいぜ!」
 ガラフは予想通りはしゃいでいる。
「ガラフ! 俺達は遊んでるんじゃないんだぞ!」
「つーか、はしゃぎ過ぎて落ちるなよ」
 ゼザとケルガーが調子に乗ったガラフを諌める。2人らしい、実に対照的なセリフだ。
 俺達は今、タイクーン王から借りた飛竜で古代図書館に向かっている。
 目的は………ヤツを何とかしてあの場から退けること。
「ビブロスの野郎、内海周辺を荒らし放題じゃねーか」
 エクスデスが放った魔物のうちの1匹───それがビブロスだ。
 俺達4人はそれぞれ、役割が決まっている。ガラフは力、ゼザは魔法、ケルガーはスピードによる撹乱、そして俺は剣技、だ。
 だが、その能力を持ってしても、真正面からぶつかり合うのはあまりいいことではない。現にビブロスとは1度戦っているのだが、俺達の力が殆ど及ばなかった。
 だから俺達は古代図書館と呼ばれるところへ向かっている。タイクーン王の話によれば、学者達が何かいい案を出してくれるだろう、というのだ。
「よっと」
「ほう、これが古代図書館か」
「結構でかいな………」
 俺達は飛竜から降りた。正面には古い、しかし荘厳な雰囲気を持つ建物───古代図書館が建っている。
 俺達はドアを開け、そのまま中へと足を踏み入れた。
「貴方達は………?」
 学者の1人が言った。
「俺達は、エクスデスを倒すために戦っている者だ。どうか力を貸して欲しい」
 ゼザはそう言うと、学者達に細かく事情を説明をした───。


 説明には約30分程かかった。学者達は俺達の言うこともあらかた分かってくれたようだ。
「要するに、内海周辺で暴れ回っているビブロスという魔物を退けたいのですね」
「そういうことだ」
 ケルガーが頷いた。
「それなら封印魔法のかかった本とイフリートの力を借りれば………」
「封印魔法………?」
 聞いたことのない魔法だ。
 俺は元々魔法にはあまり詳しくなかったが、ゼザも同じような顔をしているということはやはり聞いたことのない魔法らしい。
「封印魔法というのはその名の通り、あるものを何かに閉じ込めることができる魔法です」
「炎の召喚獣、イフリートの力を借りてビブロスを弱らせ、その本の中に封印してしまえばいいのです」
 学者達は口々に言った。
「そうか、それは中々いい方法だな」
「これがその本です」
 学者のうちの1人が差し出したのは、1冊の古いくて分厚い本だった。
「イフリートはこの図書館の地下にいます。行ってみて下さい」
 俺達は指し示されたドアを開け、地下への階段を降りていった。
 想像していた通りの、炎の魔人と呼ぶに相応しい深紅のボディ───イフリートは学者達が教えてくれた場所にいた。
『お前達、この私に何か用か?』
「イフリートよ、力を貸して欲しい。ビブロスを封印するために! そしてエクスデスを………倒すために!!」
『いいだろう。だが、その前に私と勝負をして私がその力を認めてからだ』
 イフリートの身に纏う炎の量が多くなり、辺りが高熱を帯びる。
「まともに叩けば、こっちが不利だぞ!」
 ガラフの言う通りだ。俺の剣なんか数分と持たずに溶けてしまうだろう。
「凍てつけ、ブリザガ!!」
「ルパインアタックッ!!」
 ゼザがすかさずブリザド系最強のブリザガを詠唱し、動きが鈍ったところをケルガーの十八番、ルパインアタックが炸裂。
「ガラフ、ドルガン!!」
 ゼザが叫んだ。
 俺とガラフはイフリートの放つ火炎をかいくぐると、左右に回り込んだ。
 そして同時に薙ぎ払う。
 2乗の攻撃がイフリートを強襲した。
『よかろう! お前達の力、存分に見させてもらった。いつでも私を喚び出すがいい………』
 イフリートはそう言い残して、消えた。


「荒れてるな………」
「ああ………」
 風の神殿───4つのクリスタルのうちの1つである風を司るクリスタルが奉られている場所。
 エクスデス、そしてその配下のビブロスはこのクリスタルを狙っているという。
 俺達はそれを阻止するのと、エクスデスに対抗するためにはこれらのクリスタルの力が必要だ、という賢者ギードの予言の実現が目的だった。
(………何かが、いる!?)
「ブルードラゴンッ!!」
 何てことだ。
 ドラゴン系でも強敵といわれるブルードラゴンと戦うことになるとは。
「燃えろ、ファイガッ!!」
 ゼザがすぐさま魔法を詠唱し、その隙にガラフが時空魔法を唱える。
「時間(とき)よ早まれっ! ヘイスガッッ!!」
 ヘイスガでさらに素早くなったケルガーが撹乱し、この青い竜をを翻弄する。
「ルパインアタック!」
「今だ、ドルガン!」
 俺は剣を正眼に構えた。曇りのないグレートソードは反射して青竜を映している。
 グルルゥッッ!!
「………!」
「うわっ!!」
 気がついた時にはもう、遅い。
 俺達はブルードラゴンの吹雪をまともに喰らってしまった。
「我に恵みを、ケアルガッ!」
 ゼザが回復魔法を全体化で唱える。だが、とてもではないが回復が間に合わない。
「ゼザ、オレとドルガンでヤツに突っ込む! ガラフ、援護頼むぜ!!」
 ケルガーは目にも止まらぬ速さで駆け出した。
 俺もそれに続いた。
「時間よ止まれっ! ストップ!!」
 ガラフがブルードラゴンの動きを僅かだが封じる。
 その瞬間を俺とケルガーは、見逃さなかった。
「これでも喰らえっ!」
 ケルガーが腹部に強烈な回し蹴りを入れ、俺は構えた剣でブルードラゴンの眉間を一刀両断した。
「………………終わったか」
「ああ。危なかったな」
 その後、ゼザとガラフに回復してもらい、目的地を目指した。


 クリスタルルーム───。
 目の前に現れた巨大な魔獣。
「ビブロスッ!」
「やはり来たか。だが、クリスタルは渡さない」
 巨体を生かし、ビブロスは突進を仕掛けてきた。振動が俺達に衝撃となって襲い掛かる。
「くっ!」
「ゼザ! 作戦遂行だ!!」
 ケルガーが叫ぶ。
 ガキンッッ!
(押されて、る!?)
 剣と奴の爪がぶつかり合って火花を散らす。上から押さえ付けられているせいもあって、俺の方が不利だ。
「我、汝の真の姿を知る物也………いでよ、イフリートォッ!!」
 複雑な魔法陣を描き出し、焔の魔人がその姿を現す。
 俺はその瞬間に剣を持つ力をほんの少し抜き、ビブロスの体勢が崩れたところで下段攻撃を仕掛けると、奴の攻撃範囲を離脱した。
「イ、イフリートだと! 何故お前らごときに………」
「終わりだ、ビブロス!」
 ゼザが氷のように透き通った声で冷たく言い放つ。
「や、止めろっ………!」
 奴の言葉が終わる前にイフリートは攻撃に移る。
 『地獄の火炎』───イフリートの炎技の中でも最強の威力を誇る───がそれこそ蒸発させてしまうのではないかというぐらいの強烈な炎で、ビブロスを焼き焦がした。
「ガラフッ! 今だ!!」
「我が名に於いて命じる………邪、今此処に封せん!」
 封印魔法のかかった本が勢いよく光り出す。
「ぐぅお! ………っ、お前も道連れだぁっ!!」
『何っ!』
 イフリートが言葉を発したかしていないかという時………。
 イフリートもまたビブロスと同じように光りに包まれようとしていた。
『くっ! 貴様、どこまでも卑怯なっ!!』
「イフリートの封印を解けば………どうなるか………分かって、いるな………………っ」
 その言葉を最後にビブロスは封印された───。


「これでよかったのか?」
「オレにそんなこと、聞かれてもな………」
 俺達はビブロスを無事封印することができた。
 だが………。
 その代償は少なくは、なかった。
(いつか、きっと………)
 俺達がもっと強くなったら、必ず封印を解いて救う。
 それが世話になった者に対する礼儀。
 だから。
 俺達はまだまだ強くなる。
 エクスデスを倒す、その日まで………。

後書き

 10000over記念小説として書いたこの小説いかがでしたでしょうか? 個人的にゼザが目立ち過ぎたかなぁ………と。(ドルガンあんまり活躍してない( ̄ー ̄; ヒヤリ)最後慌てて閉め過ぎたかな………。(分かってるんなら、直せ)とにかく気に入って頂ければ幸いです。

Back Home Next

inserted by FC2 system