ある日のククールとゼシカ

 オレ達は今、ベルガラックを拠点にしている。
 ドルマゲスの入って行った闇の遺跡には結界が張られていて、それを打ち破るにはサザンビーク王家に伝わる「魔法の鏡」とやらが必要らしいんだが。
 やれやれ、オレは王族とかって嫌いなんだよな。


「ほら、さっさと行くわよ!」
「言われなくたって分かっているって。愛しのマイハニー」
「あ〜はいはい、分かったから…」
 じゃあ、これからサザンビークに行くのかって?
 いや、ここ最近ずっと色々な場所を走り回ったから少し休息を取ろう、ってことになったんだ。
 トロデと姫さんには悪いけどな。
 なら、どこに行くのかって?
「何で私がアンタなんかと道具屋まで行かなきゃいけないのよ」
「オレはいつでも大歓迎だぜ、ゼシカ」
「私はちっとも歓迎していないわよっ!」
 次の予定に備えて買い出しに行こう、と言ったのはリーダーのエイト。
 それなら、ジャンケンで決めるがす、と言い出したのは無論、ヤンガス。
 で、オレ達2人は見事に負けたわけだ。
 まぁ、オレとしては役得なわけだが。
「…あ」
「どうした? ゼシカ」
 言った後でオレも気がついた。


 ───夕立ち。


 それも、割と強い。
「ゼシカ。これ、使えよ」
 オレは羽織っていたマントを差し出した。
「え…でも」
「何もないよりはマシだろ?」
 ───とびきりの、ウインクをしながら。


「…ふう」
「2人共、お帰り」
「雨、大丈夫だったでがすか?」
 ちょっと降られたわ、などとゼシカが答える。
「僕達はこれからトロデ王のところに行こうと思っていたんだけど…傘、持って行った方がいいかもね」
「そうね、その方がいいわ」
 そんな会話を交わし、エイトとヤンガスは出て行った。
 それから、ゼシカの方を見遣るとバッチリ目が合ってしまったではないか。
 もっとも、オレの方はそれぐらいで狼狽えたりすることはないんだが。
「ゼシカちゃん、顔が赤いぜ。熱でも出たかい? それとも、オレに惚れちゃったとか」
 オレは面白くなって、ゼシカをからかう。
「そんなんじゃないわよ、別に…」
 いつもの覇気がない。
 これって、もしかしてビンゴ!?
「ただ、アンタがあまりに気障過ぎるから、こっちまで調子狂っちゃうって思っただけよ」
 ………つまんねぇ。
 まぁ、中々落ちない女を落とすってのも、それはそれで楽しいんだけどな。
「取り敢えず、部屋入ろうぜ。オレの部屋の方が近いから来いよ」
「ククールの部屋に行ったりしたら、何されるか分かったもんじゃないからお断りするわ」
 いつもの返事が返ってくる。
 オレは邪な笑いを浮かべた。
「それがハニーのお望みならいくらでも相手してやるぜ?」
「そっ、そんなことしてみなさいよ! 丸焼きにしてあげるからねっ!」
 ゼシカの反応があまりにも可愛らしかったから、オレは喉の奥で笑った。


 何だかんだ言っても、ゼシカはオレについて来た。
「ほら、拭けよ」
 オレは無造作にゼシカの方にタオルを投げる。
「…ありがと」
「どういたしまして」
 彼女はタオルを受け取ると、髪を解いた。
 うわ、髪を下ろしているゼシカもスゲー可愛い、とか思っちゃったりしたのはここだけの秘密だったり。
 思わず見蕩れていると、オレはあることに気がついた。
「何見てんのよ」
「いや、ゼシカ───」
 オレはニヤけた。
「服がスゲー透けてる。そのまんまの格好でいると…オレ、ゼシカのこと食べちゃうぜ」
「っ…!」
 ゼシカは慌てて自分の身体を手で覆った。
 顔は羞恥に染まっている。
 そんな彼女を見てオレはしてやったり! とか思ったんだが。
「………ククール」
「あ?」
「そんなに丸焦げになりたいようね」
 ゼシカの顔色が明らかに変わった。
 やべ、メラミが飛んでくる!
「メラミッ!」
 案の定、火の玉が飛んできた。
 当然、室内なので、身を躱すことも出来ず…。
 そして、帰ってきたエイト達に次の日も休みにしないと駄目そうだね…、と呆れられたのだった。

後書き

 ククとゼシで買い物してたら雨が降ってきて…が最初に思いついたシーン。で、ククがマントを差し出す。ここまではかっこいい系のククで。対照的に後半のククは少し(かなり?)下心丸出しです(マテ)ちなみに道具屋と宿屋が屋外にあって、1番遠そうなところを攻略本でチェックしてベルガラックを選びました(笑)こういうテンポの小説って書き易いわ〜。

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