幸せを探しに

 I always regret not keeping you...
 So, I've noticed I love you for a long time,
 But...it's the best way for you.

 Anyway, I wish.
 If...only you and I got great happiness together,
 Could we change the fortune?

 ククールを引き止めなかった事…ずっと後悔している。
 だって、ずっと好きだって気付いてた。
 だけど…彼にはそれが1番良かったんだわ。

 それでも、願って止まないの。
 もしも…一緒に最高の幸せを手にしたら、運命を変えられるのかしら? って…。








 ラプソーン倒して…旅が終わって、ミーティア姫の結婚式での騒動も終わったわ。同時に…彼も───ククールも私の側から姿を消した。
 そう…それは私のせい。私が………ククールを突き放したから。
 でも、それで良かったと思っているの。だって…そうしなければ、ククールはマルチェロを探す事を諦めてしまう。
 いつも…行方知れずになっていた兄を気に掛けていた事も分かっていたし、何よりも…マルチェロと私の事とで天秤に掛けるかのように思い悩んでいたのも知っている。時々、苦悩の表情が表れていたから………本人は私が「どうしたの?」って顔をすると、何も無かったかのように笑顔を見せてくれたけれど。
 きっと、ククール本人にも分かっていたんだと思う。天秤に掛けた願いのうち、どちらか1つしか自分には叶えられないと…。
 だから、私を諦めさせたかった。だって、彼は…私と幸せになったとしても、今、この瞬間にマルチェロを探しに行かなかった事をきっと後悔するもの。
 そう…だから、私はククールにきつく言ったの。私はククールなんか必要じゃない、そう暗示しながら…。
 心が…ずきずき痛んだ。自分自身に嘘を付いている事が辛くて…辛くて…旅が終わった後も毎日部屋の中に引き蘢ったわ。でも…それでも、ククールにとって最良の選択だと思ってる。我慢しなくちゃ…ククールが、私の大好きな人が…それで、幸せになれるのなら………。
 私はそっと、鏡の中の自分に言い聞かせた。鏡の中の私は…泣き笑いのような顔をしている。
 それから、暫く経って…私はその化粧台に置いてあった香水を手に取った。いつか、サザンビークのバザーでククールに選んでもらった…あの香水。この匂いを纏う度…切なくなるのは、心が空っぽになったかのようになるのは…私が今でもククールが大好きで仕方ないから。
 香水を一振り付けると、甘酸っぱい香りがした。それが…とても切なくて…私はついに、泣いてしまった………。




 気が付いたら、季節は秋に差し掛かっていた。風も少し冷たくなって、木々も青々とした葉が徐々に冬を迎える準備を始めていた。
 そんな、ある日だった。エイトが私の家に現れたのは…。
「はぁはぁ…ゼシカ。慌てて来たから息を切らしちゃったよ」
「エイト! どうしたの!?」
 そんな風に私が言ったら、彼は何て言ったと思う?
「ククールの居場所が分かったよ。トラペッタに…いるみたいだ」
 いつものように…そう、笑顔を絶やさずに。
 トラペッタにいるのは…きっとルイネロにマルチェロの居場所を占ってもらう為だと思う。そう考えれば、ククールがトラペッタにいても不思議じゃない。
「…でも…私には、関係無いわ」
「ゼシカ…それ、本気で言ってるの?」
 いつもは温厚なエイトが少し怒っているようだった。
「ククールは、絶対ゼシカの事を待っているから。だから、行くべきなんだよ」
「でもっ…私。ククールに酷い事言っちゃった…! もう…絶対に許してくれないっ…」
 何で…涙が溢れるんだろう…? どうして…こんなに辛いんだろう…?
 私は自分で何がしたいのか、よく…分からなくなってきた。
「…知っているよ。でも、それはククールの為に付いた嘘でしょ? だから大丈夫だって」
「もしそうだとしても…私は、アルバート家の後継者。家の事も…あるのよ」
「ゼシカ…変わったね」
 エイトは嘆息した。
「昔のゼシカなら…家訓だなんて! そう言ったのに…」
「………」
 今だって、そう思うわ。でも…やっぱりお母さんを残して自分だけ好き勝手やれるわけ…無いじゃない。
「行ってきなさい。ゼシカ」
「…ぇ?」
 玄関で問答を繰り返していた私に思わぬ方向から声が掛かった。それは…母アローザその人のものだった。
「家訓も大切よ。だけど、行かないときっと貴方は後悔するわ」
 その言葉にハッとさせられた。
 …そうね。だって、十分後悔したんだもの。もう…これ以上後悔するなんて嫌だわ。
「覚悟を決めたみたいだね。どうする? ルーラしようか?」
「うん、お願い」
 私はエイトにルーラを頼み、家を出た。




 エイトにルーラでトラペッタ近くまで送ってもらった。本当はトラペッタの門まで送るって言ってくれたんだけど…どこかでまだ悩んでいたせいもあるのかもしれない。
 ゆっくりと門まで向かおうとした時…不意に紅い服の男が門から出て来るのを見た。
 見紛うはずなんて…無かった。それは間違い無くククール本人だったから。
「ククール…ッ!」
「………ゼシカ?」
 ククールは凄く驚いているみたいで、その場で硬直している。そんなククールの前まで私は息を切らせて走った。
「………」
 ククールは…私に触れようとしない。態度が…例え言葉を発しなくても、何倍もよく語っている。
「ククール、あのね…」
 私はゆっくりと話した。
「私…ククールから離れる事がククールの幸せだと思っていた。そうしないと、ククールはマルチェロを探しに行けないから…」
 私の拙い(つたない)言葉じゃ…ククールは分かってくれないかもしれない。でも、もしそうだとしても…私は言わずにいられなかった。
「でも…それは、間違いだった。だって…」
「………ゼシカ。辛かったの、か…?」
 ククールは思わず私を抱き締めようとした。でも、伸びかけた手が私に触れる事は無く、その手は震えていた。
「…辛かったよ、ククールが…傍にいてくれない事が…」
「オレ…ゼシカに触れてもいいのか…?」
 私はこくりと頷いた。
 ククールが震える両手で私を抱き締める。そっと、優しく…。
「オレ…ずっと、ゼシカに逢いに行こうと…何度も思った」
 ククールの、私を抱き締める手に力が籠る(こもる)。まるで、もう2度と手放さない…そう、言っているかのように…。
「でも…ゼシカがあの夜、どうしてそう言ったのか…その真意が分かってからは…ずっと、我慢していた」
「ねぇ…これから───」
 私の言葉が最後まで紡がれる事は無かった。何故なら…私の唇をククールのそれで覆ったから。
「…うっ…んんー」
 最初は優しく啄むようだったキスが、だんだんと激しさを増して思わず私の口から吐息が零れる。ククールの見蕩れる程美しい銀髪が私の顔に触れて少しくすぐったかった。
 ククールが私の唇を解放してからも私はまるで空を飛んでいるかのような浮遊感に襲われて、頭が少しくらくらした。
「おい…やり過ぎちまったか。…大丈夫か?」
 私は甘えるかのようにククールにしがみついた。
「…ククール。一緒に、行こう」
 …マルチェロを探しに。
「…ああ。行きたくねーって言っても無理矢理連れ去ってやるから覚悟しろよな?」
 私達2人の身に付けていたあの鈴達が、優しく見守るかのようにチリンと音を奏でたような気がした───。








 Everybady wanna get happiness.
 And,whoever live in the world,
 We have a right to be happy.

 みんなが幸福を手に入れたがっているわ。
 だって、幸せになる権利は誰もが持っているんだから。

後書き

 初コラボレーション作品です♪ これは「輝く月夜」のルシャ様とのコラボで、10000over記念小説の「後悔」に続くように(フリー小説だったので、私も頂きましたvvv ここから跳べますのでどうぞw)、なおかつFairyの設定も折り込んで書きました。例えば「I miss you...」に出てくる香水や「80 半身」(100ノアイ)に出てくる太陽と月がそれぞれ彫られた金と銀の鈴とか。そもそも「I miss you...」のラストと今回の香水を身に付けるシーンもダブりますよね(笑)

 それから今回は初めて英文を挿入してみました(折角英文科所属なんだし(マテ))。私の英文は拙くて面白味の欠片もありませんが、気に入って下されば幸いです。最後になりましたが、ルシャ様、素敵な企画をどうもありがとうございました! そして10000overおめでとうございます♪(大分遅くなってしまいましたが(汗)) これからも繁栄していく事を願っております。

プロット※要反転

 ゼシカ1人称。
 最初にゼシカの独白を英文と訳とをミックスして。

 エンディング後。全ての騒動(エイトの結婚式など)が終わってすぐにククールは行方を暗ます。

 ゼシカ、家にて。化粧台に置いてある香水を手にする(この香水は『I miss you...』の話に出てくる、ククールにサザンビークで買ってもらった香水)。ゼシカ、思い悩む。

 幾日も過ぎるうちに季節は秋へと変わりつつあった(風や温度の描写を入れる)。
 エイトがゼシカの家を訪ね、ゼシカはククールがトラぺッタにいる事を知る(ククールは兄探しにルイネロの占いを頼ってトラペッタへ)。

ゼシカ「…でも…私には、関係無いわ」

 思い留まるゼシカに母アローザが後押し。ゼシカ、トラペッタへ。

 丁度、旅立つククールを見つけ、ゼシカは息を切らせながら走る。ククールは驚く。

ゼシカ「私…ククールから離れる事がククールの幸せだと思っていた。そうしないと、ククールはマルチェロを探しに行けないから…」
ククール「オレ…ゼシカに触れてもいいのか…?」

 ククール、ゼシカに激しくキス(笑)

ゼシカ「…ククール。一緒に、行こう」

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