オーブ集めに東奔西走していたオレ達。だが、不覚にもオーブの在り処がどうも見当が付かず…(とは言っても、大体の位置は分かってるんだが)。結局トラペッタに行って占い師ルイネロに会う事にした。
暗黒神ラプソーンがこの世界に現出した今、魔物達も急激に強くなって来ている。現に、今こうして戦っている敵もそうだった。
中衛は常に視野が広くなければいけない。オレは前衛で戦うエイトとヤンガスの後ろから弓で攻撃しつつ、背後のゼシカを庇う。更に隙を見てスクルトを掛けたりしつつ、回復もまた同時に行う。
エイトやヤンガスが善戦しているお陰で、オレやゼシカへの被害は少なかった。
………だから、安心していたのだろう。死と常に隣り合わせの、肉迫した戦いにおいてそれは1番のタブーだと言うにもかかわらず…。
「ククール、危ないッ!!」
バチバチッ!
「…ゼシカッ!」
瞬間、全てがスローモーションだった。
迂闊だった…オレが気付かないうちに背後に回り込まれていたとは。そんなオレをゼシカは…庇った。
………普通は逆だろ…バカ、何やってんだよ…ゼシカ。
ゼシカの身体がみるみるうちに闇に染まっていく。それは、呪いを掛けられた証拠だった。
「ベホマ!」
オレは短く印を切り、ゼシカを回復させる。戦闘中の呪いに関しては回復させる方法が無い。こんな事なら、修道院できちんと解呪系呪文を習得しておけば良かったか…。しかし、起こっちまっものはどうにも出来ねーからな。今出来る最善の方法をオレは取った。
だが………そこには1つの大きな誤算があった。
戦闘が終わってもゼシカは一向に目覚める気配が無い。それどころか、薄らと汗までかいてやがる。
「…ゼシカ?」
熱があった。ゼシカの身体が異常に熱を帯びていた。
「ゼシカ…様子が変だね。1回街に戻った方がいいかな」
本当は今すぐ街に戻りたかった。しかし、ルーラの呪文を唱えるわけには行かず、キラーパンサーを呼び寄せた。意識を失っているゼシカを抱きかかえ、オレはキラーパンサーに飛び乗る。
「ゼシカ………」
オレはそっと彼女の名前を呟いたが、その音は吹き付ける風の中に掻き消されてしまった───。
宿屋に駆け込んで、すぐに薬を調合した。しかし、ゼシカは殆ど薬を受け付けなかった。
このまま…オレは、ゼシカを死なせちまうのか………? オレは…何て無力なんだ。大切な人1人………守り抜けないなんて。
その想いに押し潰されそうになった。こんな形で、ゼシカを失いたくなかった…。
やる事は1つだけ。オレは自ら薬を呷った。そして、ゆっくりとゼシカの口にそれを流し込んだ。
いつものキスとは違う。こんなのは………ただ、哀しいだけだった。
君の為に…いつまでも祈り続ける。ずっとずっと…。
オレは静かに目を瞑り、聖句を口にする。ただひたすらずっと………。
看病の甲斐があってか、ゼシカの酷い熱は治まった。今思うと、彼女に無理をさせ過ぎたのかもしれない。
この旅の中で彼女も大分体力を付けていたが、それでも女である事は変わりない。
こんな風にオレが思っていると知ったらきっとゼシカは怒るだろう。だが、それでも守りたいと思うのは男の甲斐性なのか、それともただ単に傲慢なだけなのか。どちらにせよ、オレはゼシカを守りたかった。
「………ん…っ…」
「ゼシカ?」
ゼシカが薄らと目を開ける。どうやら意識が戻ってきたらしい。
「気が付いたか?」
ゼシカは上体を勢い良く起こす。
「おい、そんなに勢い良く起きて大丈夫なのかよ!?」
「うん…大丈夫…っ…げほげほ」
「ほら、言わんこっちゃねぇ…」
オレはゼシカを宥め(なだめ)、再びベッドに寝かせた。
ふと、その時。ゼシカと目線が思いっきり合ってしまい、お互い硬直する。ゼシカは目を逸らさない。
オレはゆっくりとゼシカに覆い被さり、その艶やかな唇を奪った。
「…んっ…ふっ…うぅん…」
少しゼシカは抵抗していた。が、オレはその抵抗する両手を押さえ付けて、更に角度を付ける。ゼシカの息遣いが少しづつ荒くなってくる。オレ自身、目眩がしそうな程頭がくらくらしていた。
オレの残り少ない理性が辛うじてゼシカを解放すると、彼女はちょっぴり怒ったような顔をしていた。
「もぅ…寝起きを襲うなんていい度胸じゃない…っ!///」
「わりぃわりぃ…ゼシカが目を覚ましてくれて嬉しかったから…つい…」
オレにも良く分からねぇ…殊にゼシカが関わるとどうしてか頭で考えるよりも先に身体が反応しちまう…。
「普段の私だったら…間違い無くメラゾーマ行きだわ」
「じゃあ…今は普段のゼシカじゃないから何ヤってもいいって事か」
「もぅっ! そんな事言ってると本当に丸焦げになるわよ?」
ゼシカが本気で怒っていない事は表情で分かる。あれは要するに単なる照れ隠しだ。
「なぁ…もう1回キスしていいか?」
言うや否や、オレはもう1度ゼシカの唇を堪能した。今度はゼシカの方もオレの背中に手を回す。
「んっ…ぁ…ふぅん…」
名残惜しいが、ゼシカから離れるとゼシカはそっぽを向きながらこう言った。
「そんなにキスばかりしていると…風邪染っても知らないわよ…///」
「ゼシカに染されるなら喜んでもらうさ」
「………馬鹿///」
益々紅くなっていく顔がとても可愛く見える。
あぁ…本当にオレはゼシカが好きなんだな、と改めて思ってしまう。…まぁ、当の本人はまたすやすやと眠りに落ちているのだが。オレはその、くるくる変わるゼシカの顔をじっと見つめながら、そんな事を考えていた───。
後書き
リクエストは「かっこいいククール」。果たしてカッコ良かったのか…(-。−;) えと、私が思うかっこいいククールは計算尽くじゃないククールと言う事で、こんな形になりました。それにしてもうちのククールは相変わらずキス魔だし…(爆死) ちなみにPrayer for youの意味は「あなたへの祈り」。まんまですね;; 最後になりましたが、ルシャ様、相互リンクどうもありがとうございます。これからも宜しくお願いします♪
プロット ※要反転
タイトル案その2/Prayer for your happiness(貴方の幸せの為の祈り)
ククール1人称。
ゼシカが戦闘中にククールを庇って呪いを受ける。通常はすぐに回復するはずが、そのまま倒れる。身体が熱っぽい。ククールが1番焦って動揺。
ククール(オレは…何て無力なんだ。大切な人1人………守り抜けないなんて)
ゼシカの看病を付きっきりでしながらククールは自分が何も出来ない事を悔やむ。
ククール(君の為に…いつまでも祈り続ける。ずっとずっと…)
ゼシカ、暫く経ってから目覚める。目覚めるや否や、ククールは有無言わさず強引にキス。