雨の日の罰ゲーム

 雨が好きなヤツなんているのか…? 服は濡れるし、色々と面倒だしかったりーったらありゃしねぇ…。
 オレはエイトに雨の中他の街へ移動するのはあまり得策じゃないと進言した。つーか、ただでさえ旅なんて面倒臭いのに、雨だったらオレのやる気なんてあっという間にマイナスだ。
 幸い、このところ休みを取っていなかった為にエイトもおっさんも今日1日オフにしようと言ってくれた。
 で、ゼシカが…言い出したんだよな、トランプやろうよなんて。今までも時々宿屋に泊まるとみんなでトランプをする事がある。
 ぁ? 疑ってんのか?? オレがイカサマしてんじゃねぇーかって。
 …甘いな、金になんねーゲームでイカサマしたって得しないぜ? しかもあのお嬢様に呪文唱えられるという、おまけ付きだ。リスクが大き過ぎる。シャレになんねーっつーの。
「ダウトでがす!」
「悪ぃなヤンガス、オレの上がりだ」
 オレは基本的にカードゲームじゃイカサマ抜きでも大負けはしない。


 結局、ダウトではヤンガスが負けた。
 何つーか、ヤンガスはバカ正直過ぎるからダウトとかポーカーだと負けやすい。逆に意外とエイトは強い。ほんわかしてるようで抜け目がないっつーか、結構腹黒かったりするしな…アイツ。ゼシカはそん時次第だな。大当たりする時もあれば、全然ダメな時もある。
「じゃあお約束の罰ゲームは…そうだな。ゲルダへの愛でも語ってもらおうか」
 いつもの事だが、罰ゲームとして負けたヤツは1番勝ったヤツの指示する通りにしなければいけない。
「あぁ…ゲルダがすか…。あいつ、ああ見えてホントはいいヤツなんでがすけどね。小さい頃、2人で冒険した時なんかアッシが怪我してバンダナ貸してくれたりしたでげす。それから───」
「あー、もう分かったから…」
 オレは呆れてヤンガスを遮った。するとヤンガスは、
「もういいでがすか? これからがいいところだったのでげすに…」
 などと言ってまだ話し足りなそうにしていた。正直、ここまで惚気られるとは思ってもいなかったな…。
「次はババ抜きやりましょ!」
「いいね、もう一勝負!」
 案外、エイトってゲーム好きだよな。カジノでもよく遊んでいたりするし。もっとも、アイツの場合はあくまでも息抜き程度なんだが。
 折角だから座っている場所も変えようという事で、オレはゼシカの向いに座り、右にエイトが左にヤンガスが座った。
「いざ、尋常に勝負でがす!」
 そう言って、ヤンガスは真剣な顔をし始めた。
 要注意なのはエイトだ。アイツは本当に危ない。気が付いたら上がっていたなんて事もあるぐらいだしな。
 オレはいつものように涼しい顔でプレイを開始した。




「どう? 後ちょっとで上がりよ」
「オレももう少しだな」
 ゼシカとオレが残り僅かとなった。ゼシカがふふんっ、と余裕綽々に挑発してくる。それをオレはそのまま受け流し、ヤンガスの手札を引く。
 ちっ…ハズレか。
 オレは胸中で毒づく。しかし、顔には絶対に出さない。
 一方、ゼシカの方も当たりは来なかったらしい。で、再びオレの番。
 …ダメだ。
 ゼシカも同じように外した。よし、次こそは!
 オレは躍起になっていたが、やはり外れ。
 と、そこでオレは重大なミスを犯していた事に初めて気が付いた。オレはゼシカに注意を払い過ぎるあまり、他の2人の事をすっかり忘れていたのだった。
「あれ? 上がっちゃった…僕はてっきりククールかゼシカが1番だろうと思っていたのに」
 ぬけぬけと言ったのはエイト。つーか、お前…さり気なく痛いとこ突くよな…。
 ゼシカが失敗してヤンガスの番。
「あっしも上がりでがす」
 くっ、オレとゼシカの一騎打ちかよ。ゼシカには悪いが、オレは罰ゲームだけはごめんだぜ。つーわけで、オレが勝たせてもらうからな。
 そう思いながらカードを引く。オレの方にジョーカーは無いから2分の1の確率で当たる。
 …げっ、よりによってジョーカーかよ。
「うーん、これにするわ!」
 ゼシカが引いたカードは………当たりだった。
「上っがり〜!」
 うわ…まさか負けるとは…。
「じゃあ、恒例の罰ゲーム。行ってみようかー?」
 エイト、お前。無邪気な顔して酷な事言うよな…。
 エイトの事だからまた酷い事を言うのだろうと身構えていたら…まさか、こんな事を言い出すとは。
「罰ゲームは…そうだねー、ゼシカにキス」
「…! 腹黒いぞ、エイト!!」
「…!///」
 オレはムキになって反撃した。
「兄貴。せめて、頬にしてやったらどうでがす?」
 が、ヤンガスまでも便乗する。
 大体、そういうモンは見せ物じゃねーっつーの!
「ゼシカも何か言ってくれよ…」
「………バカッ///」
「あっ…待て、ゼシカ!」
 ゼシカは一言オレにそう言うと、さっさと部屋から出て行ってしまった。
「あーあ、後もうちょっとで面白いものが見れたのに…」
 エイトが心底残念そうにそう言った。あぁ、コイツ…いつか軽くシメてやりてぇ。
 オレは溜め息を付いた。




「何よ、用でもあるの?」
 オレは夜になってからゼシカの部屋に謝りに行った。
 ゼシカは相変わらず機嫌が悪い。やれやれ…お嬢様のご機嫌取りも大変だぜ、全く。大体、オレのせいじゃないのに八つ当たりかよ。
 内心そう思いつつも、オレは素直に謝った。
「悪かったぜ…ゼシカの事をもっと考えるべきだった」
「知らない。さっさと出てって」
 ゼシカがぷいと後ろを向く。オレの方も流石に我慢が出来なくて。
 ゼシカの方もイヤな予感がしたのだろう。慌ててオレの方に向き直り、後退りした。
「ちょ…っ、放しなさいよ!!」
「やだね…ゼシカが素直になるまで放さねー」
 オレは強引にゼシカを壁際に追い詰め、そして彼女の唇に自分のそれを重ねた。
 自分でも抑えが利かなくなってるのが分かっていた。
「…んっ! ぁん…やっ………」
 ゼシカの嬌声を聞いたオレは益々おかしくなっていく。いっその事ゼシカを壊してしまいたいのかもしれない。
「ゼシカが許してくれなければ、もっといじめちまうぜ?」
「やっ…ダメ…」
 ゼシカがオレの言葉責めに耐えられない事は良く知っている。オレは両手でゼシカを拘束しつつ、段々下へとキスの雨を降らせる。
「あっ………分かった、わよ。許してあげるから、もぅ、止めて」
 頬を上気させながらゼシカはそう言った。
 その顔と言ったらそのまま食べちまいたいぐらい艶っぽかったが、オレは何とか踏み留まった。シチュエーション的には問題無いんだが…流石にメラゾーマ食らうのは避けたいからな。
「ゼシカ…」
 オレはゼシカの両手を手放し、再びキスをした。…とは言っても、先程とは異なり、軽く口先で触れただけだが。
「おやすみ、ゼシカ」
「ククールのバカ…さっさと行きなさいよ、もぅ!///」
 ゼシカの顔がより一層朱に染まっていくのを喉の奥で笑いながらオレは彼女の部屋を後にした───。

後書き

 久々の小説です! 最近1ヵ月に1小説というパターンになりつつあります(焦) もっと増やさねば…。さて、今回のですが、リクエストは「道具を使う」でした。道具…トランプですがOKでしょうか?(笑) 返品不可ですから宜しくお願いします(マテ) ちなみにあるサイト様主催のチャットでリクエストが「道具を使う」と言ったら皆様狼狽しておりました(笑) それだけ創作やってる人は想像力が豊かなんでしょうね…(違) ちなみに最後の方はアドリブです(ぉぃ) 最後になりましたが美月瑠奈様、相互リンクありがとうございました! これからも宜しくお願いします♪

プロット※要反転

 ククール1人称。
 雨の日、宿屋でみんなでトランプ。
 ヤンガスがダウトで負ける。勝ったククールがヤンガスに罰ゲームとしてゲルダへの愛を語るよう指示。

ククール「あー、もう分かったから…(呆)」
ヤンガス「もういいでがすか? これからがいいところだったのでげすに…」

 ゼシカ、ババ抜きをやろうと持ち掛ける。
 ゼシカ、ククール共に1枚。でも中々上がれず(座っている位置を描く事)。
 最終に勝ったのはエイト。そして負けたのはククール。

エイト「罰ゲームは…そうだねー、ゼシカにキス」
ククール「…! 腹黒いぞ、エイト!!」
ゼシカ「…!///」
ヤンガス「せめて、頬にしてやったらどうでがす?」

 ゼシカ、ダッシュでトンズラ(笑)

エイト「あーあ、後もうちょっとで面白いものが見れたのに…」

 ククール、溜め息。

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