第1話 オルテガの息子

『リオン………………リオン………………私の声が聞こえますね………』
 頭の中に響く声に導かれ、僕は美しい森の奥地にそびえ立つ崖へと登った。
『私は全てを司るもの。貴方はやがて真の勇者として私の前に現れることでしょう。しかし、その前にこの私に教えて欲しいのです。貴方がどういう人なのかを………………。さあ、私の質問に正直に答えるのです』
 不思議な声だと思った。でもその声に敵意はなく、それどころか汚れの一点さえもなかった。それこそ精霊神ルビスのように貴い存在だった………。
 僕はその声の主に頷いて、幾つかの質問に答えていった───。


 そして僕が16歳になる誕生日の朝───。
「起きなさい。起きなさい、私の可愛いリオン」
「おはよう、母さん」
 僕はベッドから出て、身支度を始めた。今日が僕にとって、特別な日だからだ。
「おはようリオン。今日はとても大切な日。リオンが王さまに旅立ちの許しを頂く日だったでしょ。母さんはこの日のため勇敢な男の子に育てたつもりよ。さあ、母さんについていらっしゃい」
 僕は母さんについて家を出た。
 朝日が昇ったばかりだからちょっと空気が冷たい。
「ここからまっすぐ行くとアリアハンのお城よ。王様にちゃんと挨拶するのよ。さあ、行ってらっしゃい」
 そう言われて、僕がお城への橋を渡ろうとした時。
 ふいに聞き馴れた声が聞こえてきた。
「リオーーン!」
 法衣に身を包んだ女の子ミントと体格がよくて戦士の格好をしているアレスの2人が走ってきた。
「ヒドイぜ。俺達を置いてくなんて」
「そうよ、リオン」
「絶対そう言うと思ったよ。じゃあ、行こうか。母さん、行ってくる」
「ええ。行ってらっしゃい、リオン」
 僕は2人の幼馴染みと共に荘厳なアリアハン城へと足を踏み入れた。


「よくぞ来た! 勇敢なるオルテガの息子よ。その精悍な顔つきといい、さすがオルテガの子供じゃな。既に母から聞いておるだろうが、そなたの父オルテガは戦いの末、火山に落ちて亡くなってしまった。しかし、その父の後を受け継ぎ、旅に出たいというそなたの願い、しかと聞き届けたぞ! そなたらなきっと、父の遺志を継ぎ、世界を平和に導いてくれるであろう」
 アリアハン王は威厳のある声で言った。
 僕達は今、謁見の間にいる。周りを見渡すと豪華なタペストリーや深紅のビロードが飾られ、まさに絢爛豪華とでもいうべき空間になっている。
「敵はバラモスじゃ! 世界の殆どの人々は 未だに魔王バラモスの名前すら知らぬ。だが、このままではやがて世界は魔王バラモスの手に………………。それだけは何としても食い止めねばならぬ!」
 バラモス───森と湖の豊かな地を治めていたネクロゴンド王国をたった一夜にして滅ぼした 、魔王。そして、僕の父さんの………仇。
 僕は自然と手に力を込めた。
「リオンよ、魔王バラモスを倒してまいれ!  ではまた会おう!」
「はい、王様!」
 僕達は親切な近衛兵の説明を受け、謁見の間を後にした。


「リオン、まずは北のレ−ベの村に向かうんだろ」
「うん」
「お母様に別れの挨拶をしなくていいの?」
 母さん………。
 本当は逢いに行って、一言別れの挨拶を交わすべきなのかもしれない。でも、そうしたら僕は………この、いつ終わるともしれない旅への決心が鈍ってしまうだろう。
「………………行こう」
「分かったわ」
 僕の考えていることが分かったらしい。ミントはそれ以上追求しないでいてくれた。


 外へと踏み出す。
 そこに漂うのは野生の、香り。
「リオン! モンスターだわ!!」
 現れたのは3匹のスライム───魔物の中でも1番弱い、ゼリーのような青い軟体生物だ。
 僕が夢中で父さんの形見の剣を振るうと、その一撃は狙いを過たずにそのうちの1匹に命中した。
「このっ!」
 僕の横でアレスが同様に剣を振りかざす。
(凄い! 一撃だ………)
 やっぱりアレスは凄い。僕よりも剣の使い方が上手いし、力だって僕より全然上だ。
「きゃあ!」
「ミントッ!?」
 ミントが必死に檜の棒を振り回して応戦しているが、残った2匹に立続けに攻撃を喰らってしまったらしい。
「後ろに下がって! アレス、行くよ!!」
「おう! 任せとけ!!」
 僕はミントにそう指示をすると、アレスと僕はスライム達に同時に薙いだ。
 切り裂かれたスライムは血飛沫を上げて崩れると、ドロドロに溶けてそのまま地面へと消えていった。
「ミント、大丈夫だった?」
「うん。リオン、アレス、ありがとう」
 僕はまだまだ、弱い。
 この剣だって本当の力の半分も出し切れていない。
「ミント、レーベまでは後どれぐらいかかるんだ?」
「そうね、お昼過ぎには着くはずよ」
 僕達は方位を確認するのと、先程の戦闘の疲れを癒すために木陰で休息することにした───。

後書き

 やっと書くことができました。FF5は進みが早いのに対し、DQ3はなかなか更新できませんでした(汗)自分としては50点ぐらいですかね。あまりいいできじゃないなぁ〜、と。次回はもうちょっとましなものになるように努力したいと思います(反省)

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