頂き物 死せる者達の物語

「最前線プラントで、味方識別信号がロスト」
鬱蒼としたダリーヤで、息を呑む兵士の声がノイズ混じりに聞こえる。
「うろたえるな。こちらには先日味方につけた腕利きがいる!…くっ、また一機」
すべて密集した地点だが、規則性がなさすぎる襲撃に、指揮官は内心混乱していた。
「狙えるか?」
震える声を隠せないままに、高台で遠雷を構える紅い狙撃手に問うた。
「建物の影から襲っている…小賢しいな」
索敵センサーの稼動している最前線では、敵機の位置は筒抜けだ。
しかし射線上に壁や柱があれば、どこにいるか分かっても意味がない。
「奴を墜としてくるんだ、進軍を許可する」
歯ぎしりする指揮官が指示を出す。狙撃手…呂布は、悠然と最前線に歩を進めた。


遺跡の入り組んだ地形を慎重に進む。
味方機の信号は点々と散らばっている6機。突出した1機に4機を落とされたらしい。

進行しながら敵機を掃討していく。

ガンターレットに駆け込む敵。
榴弾、偵察機を構えた敵。
明後日の方向を狙撃している敵。
前線で睨み合う敵。
自軍のコアまで隠密行動をとる敵。

これで6機撃破。
自軍への攻撃がまた一度…Dプラント付近で信号が途絶。かなり自陣の深くだ。
「奴はまだいるのか…」
リペアポッドに入り、遠雷の弾を装填して…

シャーッ、ブンッ!

アサルトチャージャーの音が聞こえた瞬間にリペアポッドから飛び出し、ポッドの『上に乗る』。
案の定、幅広の刃がリペアポッドの側面を切り裂いて通過した。

ニュードが循環するリペアポッドは、ブラストと同様の原理で、しかし凄まじい速度で修復される。
「なんだ、避けれたのか」
底冷えするような声が鼓膜を震わせた。



(こいつが噂の紅い死神か…道理にそぐわない、前線の射手)
思案を巡らせ、剣を構え直す。
狙撃という役割を考えると、一足で届くこの間合いは自分の間合い。
「…随分と命知らずだな、ここはもう敵陣だというのに」
地の底から響くような…低く、鋭い刃物のような声。
(冗談じゃない。こいつは何で平然としていられる?…いや、そこは問題じゃない。こいつはきっと…)
「お前も大概だよ、この距離で冷静なんて…」
口元が自然と歪む。
戦場を死に場所と認めた者だからこそ、この状況下で笑える。
「つまり俺達は」
こいつ…呂布も笑みを浮かべる。
「「似た者同士だ」」

俺と呂布は、ただ戦を生き、ただ戦で死ぬ、どこにでもいる亡者だった。



「お互いの役どころは…そうだな、さしずめ猟犬って所か」
目の前の剣士は語りかけてくる。どうもこの剣士、他愛のない軽口が好きらしい。
「所属がなく、カラーリングも識別できるものではないな?誰にでも噛み付く狂犬と一緒にしないでもらおう」
剣士のカラーリングは、武勲を重ねた者が所持するストライプカラー。
胴と脚を黄一色、腕と頭をストライプにすることで近〜中距離だけに見やすいアピール色だと取れる。
脚にストライプを入れると、色の特性上どうしても目立ってしまう。
あんな闇討ち同然の真似をしているくせに、ある程度考えられた配色アピールとは。
死に場所を探しているんだろうか。俺と同じように。
「守るもんが無くなっちまっただけだ。そういうお前こそ大丈夫なのか?」
ふっと自嘲するように呟く剣士が、後に続けた言葉。
頭痛を伴った疼きが頭の中を駆け巡る。
ぐっと眉間に皺が寄るが、有効な処置はない。
薬は使ってしまったし、指揮官は遥か後方。ベースの付近だ。
幸いにして、俺たちには鋼の仮面がある。ブラストという仮面が。
ではどうするか?
「…気取られる前に」
この痛みの原因を消す。
この『異物』の言を遮るように、力強く呟く。
ブラストを操縦する腕に、手に、指に、順に意識を伸ばした。
さっきまで精密に動いていた心と体が、何故か錆び付いている。
そこに思い至り、原因を考えようとすると頭痛がひどくなる。
それでも苦痛のない糸口を探そうと、必死に巡る思考は。
「大事なもの、あったんじゃないのか」
あっけないこの一言で焼き切れた。


案の定だった。
誰も過去を知らない、世界を転戦する最凶のいくさ人。
そんな彼が、軍属になったというだけで驚きこそしたものの。
『あり得ない話ではない』
と妙に得心いったのもまた事実だ。

合法的に、戦場で殺したいターゲットがこちらにいる?
軍属じゃないと近付けない相手が目的?
安心して定住する場所が欲しかった?

…安心できる場所を、見つけたか?

理由は様々だし、知っているのは彼らだけ。俺は想像の域を出ないものの。
「冷静な会話からの銃撃にしたら、力みすぎだな」
一瞬の停止の後で構えた遠雷は、懐に飛び込まれたことで無力化した。
「…手詰まりなのはそちらもだろう?」
苦笑しながら呂布が問掛けてくる。
「さぁどうだか。サーペントを持ってるかもしれないぜ。手榴弾で自爆もあり得る」
余裕綽々といった風で話をしてみるものの、怒りながら呂布は冷静だった。
「背中のマウントが歪んでいる。銃撃されたな?手榴弾は最初の威嚇、本命の掃討、ここまで飛び込む置き逃げで3個すべてを使っている筈だ」
すべて読まれている。
冷や汗が出るが、ブラストという仮面がある限りは操縦さえしっかりしていれば問題ない。
「そして踏み込みすぎるティアダウナーの特性を理解した上で、こうして自分からも押しているわけか」
ここまで手詰まりとなると、奴の手の内も知る必要が出てくる。
しかしそこは流石に場慣れした兵。
「そうだ。だが俺が不利な距離なのも変わりないがな」
自身の情報も伏せながら、こちらの状況を吟味して戦場を構築していく。


(ふむ、思ってた以上に動かないな)
目の前の剣士と絶妙な加重を掛け合いながら、装甲を擦り合わせる。
向こうは仕掛ける事ができないし、こちらも同様だ。
ダッシュ斬りは耐えられても2段斬りは即死。
しかも向こうはそれに気づいている。
ニュードであちこち結晶化、硬化し始めている剣だ。
こんなものを振り回すボーダーが、気づいていない訳がない。
「俺も野郎とくっつく趣味はないんでな、手札がある有利を使わせてもらう」
そう通信し、行動を開始した。


呂布の姿が霞んでいく。
「光学迷彩…!」
思わず呟いた言葉に、律儀にも呂布は答えた。
「そう、これがスナイパーの特殊武装に台頭して久しい。素晴らしいよ」
本来であれば攻撃するところ。
光学迷彩とて完璧ではない。
無理やりに認識を捻じ曲げるこの武装は、攻撃による不意の衝撃に弱いため、その空間を僅かながら露出させる。
「…手詰まりと判断して使わない訳がない、か」
今の俺にはサーペントがない。ある武装は剣だけだ。
一か八か、横に剣を振って広く横薙ぎにするか?
それならゼロ距離にも掠め当てれる。

しかし迷彩を完全に発動させてしまった以上、事が進むのは当然。

先ほどまであった自分と同等のブラストの質量がなくなり、前によろける。
ブースト光は完全に掻き消え、地上に土埃もない。
(飛び越えられた!)
気づいた時にはもう後ろに姿を現した呂布がいた。
「遅い」
鳴り響く遠雷。
重厚な装甲が、音を立てて砕け落ちた。



まっすぐ、冷静に冷徹に撃ち抜いた。
いつもと同じ、何の狂いもない確実な作業。

…そのはずが。

「あぁぁぁぁッ!!」
咆哮。
吹き上がるニュードと、機体を制御する液体金属。
肩のケーファー44の追加装甲を穿ち飛ばされ、二の腕に孔を空けた剣士のブラストが、目の前で剣を振り上げた。


避けれたのは僅かな経験と、ただの勘と偶然だった。
気配がある背後に剣を振り抜いたら、射線から半身が逸れただけ。
(…くそっ、定石通りに後ろを取るのは分かるが、この距離で当てるかよ!)
腕の損害を知らせるアラートがけたたましく鳴り響く。
爆発と稼働停止こそ防げたものの、精密な伝達回路を寸断された。右手の指は剣を握ったまま動かない。
手首のジョイントから先の稼働停止、握り込んだ状態で本当に助かった。
それでも通常通りの稼動は見込めないだろうが。

振り抜いた剣はエッジβの肩部ウイングを斬り飛ばした。
(致命傷にはできないか…)
予想通り体当たりをしようと飛び込んでくる姿が見える。
(ここまでは予測できた。同じ状況になったら攻め手が多いあいつが有利…!?)

―――ジッ、ジジッ

突撃の素振りだけ見せて、呂布は迷彩で姿を消した。

「ちっ…待てよ!」
焦りながら振り抜いた剣は、無情にも空を斬る。
「…鬼ごっことは、随分と高く買われたもんだな」
奴は相性を差し引いても、近距離で俺を殺せただろう。
完全に、確実に俺を排除するべく、より間違いのない手段を選んだ。
それが意味するのは…
「どうやら図星か。逆鱗に触れちまったらしい」
気怠そうに剣を引きずって、剣士のブラストは歩き出した。


アラートの警告条件をいじり、黙らせる。駆動系は無傷だ。
意味一番問題があるのは腕だが、それ以外はそこまでひどい状態ではない。

警戒しながら周りを見渡して進む。
どの道あの呂布を倒さない事には制圧できないだろう。
そう確信させるだけの危険さが、奴にはある。
きっと奴と離れたのを良いことに敵ベースに飛び込めば、その時点で俺はブラストと一緒にあの世行きだ。
スナイパーの最大射程からゼロ距離まで、すべて戦えると見て間違いない。

そして一番怖いのはあの判断力。
奴に勝てるかは、俺の直感が奴の判断する速度を上回れるか。それそのものが直結する。
「できれば二度と、関わり合いになりたくねえ」
素直に浮かんだ言葉は、溜め息と共に消えた。


スナイパーは総じて高台に陣取るのが定石だ。

しかしここまで姿を見せないとなると、気持ちばかりが消耗してしまう。
(センサーがあるかもしれないな…)
周囲を見渡した時、何者かに撃たれた。
「…ッ!?」
警告に驚きこそしたが、セントリーガンLZだ。あんなダメージでも危険な代物、破壊しておこう。
歩み寄ってしゃがんだ刹那、視界が光で埋め尽くされた。
(ジャンプマイン!?)
爆風で弾き出された先で、遥か先にある銃口が煌めく。
偶然で命を拾った自分に苛立ち、舌打ちする。
転がりながら咄嗟に剣をあげると、劣化ウラン弾の弾頭が魔剣に直撃した。

(あくまで頭を撃ち抜こうってか)
(あのタイミングを剣で防げるのか)

(化け物が…!)

二人の罵り合いは、まったく同じタイミングで戦場に響き。
「…正気じゃない。もし裏切られたら」
両軍の指揮官が、
「…洗脳だけで、飼い慣らせるのか?」
頑丈な筈の各々の手綱を、まるで蜘蛛の糸のように感じていた。

「さて、方角は掴めたが」
こちらから仕掛けるのであれば、ルートに気を使う必要がある。
地雷の除去が手軽にできないのがネックだが、ジャンプマインそのもののダメージはまだ大丈夫なレベルだ。
そして何より、俺が分かったのは奴のいる距離まで掴めていない。

L字の戦場の端へ、じりじりと距離を詰めていく。
そしてその姿を見つけた。

奴は迷彩も使わず、堂々とそこに立っている。

「遅かったじゃないか…」

「当然だ、俺は雷は斬れないからな」
応えながら、奴の元に突撃を開始した。

右に迂回して飛び上がり、射線を大きく外れながら踏み込む。
奴はスコープを覗いていない。
(やるなら今、一撃で決める!)

しかし振りかぶった刃は、振り始める前に止められた。

『前に出てきた』呂布の『遠雷』によって。

ここで俺は、二つの事に驚愕した。

まずスナイパーがこれほどの射程を持ちながら、敢えて前進してきたこと。
そして次に、スコープを覗かずに射撃を当てたこと。

左の肩装甲に当たり、勢いが無くなったブラストが失速する。
目の前に着地するも遠雷をリロード中の呂布に攻撃の手段がない。
砕けた肩甲が地に落ちるより早く、奴は行動を起こした。
咄嗟に武器をジャンプマインに持替えて、背を向けて設置。
同時にジャンプして俺のダッシュ斬りを避け、その滑る先でマインが発動するように仕掛けてある。
仮に斬りにこなければ、また鬼ごっこも仕切り直しだ。
ゼロ距離で遠雷を当てられた俺への精神的ダメージは、実はかなり大きい。
離されれば冷静さを欠いたまま、こいつの思うようになぶり殺しにされるだろう。
それが俺に火を着けた。

「つくづく優等生だな、計算し尽くして!」

踏み込み、ダウナーを振りかぶる。

「型にはまっちまったらな、剣士は伸びないんだ。読まれたら終わりなんだよ!!」

残り僅かなエネルギーをアサルトチャージャーに回し、加速して剣を薙ぐ。
遠心力で威力と範囲を増大された剣が、唸りを上げた。


「…斬られた!?」
それはまさに異常というにふさわしい事態だった。
剣士が剣をただ横に薙ぐだけでなく、僅かに上に向けて振った。
切っ先が僅かに届いてないはずのジャンプマインが、予想を上回る速さの突撃で真っ二つになる。
しかしこの破壊は、振り始めで強引に巻き込んだものだ。
本命はこの後に来る。
敵も片腕は満足に動かないはずだ。体を折り曲げ防御の体制をとった。
果たして剣は予想通り本来の威力を発揮せず、左腕一本と片脚の半分に刃が食い込んで自機は吹き飛ばされた。
届かないはずの一撃に、俺は斬られた。


「…あぁ、倒し切れなかったか」
あれも防御されると、打つ手がない。
(…まったく完敗だ)
相手には遠雷が手元に残り、受け身も取った。2本の脚も動くらしい。一方俺は、無理に振り切った状態から動けずにいる。
AC、ブーストともに無し。

そして呂布が片腕に持つ遠雷の引き金が、ゆっくりと引かれた。


――ドンッ!


剣を持っていた右肩。
胴との連結が遠雷で撃たれ、腕と剣が地に落ちる。
コクピットのすぐ側だったからか、制御が利かなくなった。

「なんで外した!」

情けをかけられたと思い、力任せに叫ぶ。

「お前が斬ったものはなんだ?片手で狙撃なんて不可能だろう」

こいつならやりかねないと思ったところでヘリが来た。マグメルだ。

《そこの剣士、いい加減勧誘に応じなさーい!あなたが居れば儲かるもの!》

いつも騒がしい、システムオペレータだ。

《あぁ、助けてくれたら考えてやるぜ。もちろん救助の経費も払う》

肩の装甲が無くなった情けない手を、ひらひらと呂布に振って。

「ほら、あんたもお迎えが来たようだ…金輪際、あんたは見たくないよ」

ブラストウォーカーとヘリ、加えて2機のブラストランナーがこちらに来ている。

「おぉ…ご大層なお迎えだな。俺はマグメルに牽引されて帰る。撃ったら国際問題だぜ?」

笑いながらそう言ってやると、呂布が遠雷を振りながら苦笑した。

「貴様の顔をもう見なくて済むのは魅力的だが、生憎ともう限界でな。さっさと消えてくれ」

そうして二人は別れた。

きっとこの広い世界で再び会う事があれば、お互い誰だか知りながら殺し合う。

そんな二人の命知らずな一幕。

後書き

お付き合いいただきましてありがとうございました。 パワーインフレと言われていますが、一発大破じゃ面白くないじゃないですかw 少しずつ行動不能にならない程度に、お互いの装甲をぶち壊してみました(ぇー

※剣士は想像上のキャラクターで、実在のボーダー、ブラストとは一切関係ありません※

さて、呂布がのこのこ出てきた理由は? プロテクトがかかった記憶を無理に調べたので、意識レベルに関わる状態になりかけていました。そんなこんなで待ってたと。最後の呂布斬るところ、分かりにくかったですねー。 ごめんなさい(´・ω・`)

剣士の腕がどちらも無事じゃないので、エッジと杖の腕と脚で強引に防御させました。 胴への直撃だと逝ってしまわれるので、それなりに生存できる方法で決着させました。 細かな突っ込みは勘弁なんだぜ!(;ノノ)

原作で最終的に呂布とヴァル様は愛に殉ずるわけで、ヴァル様と遭遇した時点で最期に向かって走ってるわけですよね。 ここで呂布を拉致した側も、薬品投与以外の洗脳の手段は、ヴァル様との接触以後も取ってません。

ヴァル様と呂布が敵同士で再会してから、俺と戦う暇は無さそう→じゃあ洗脳初期段階だから、痛覚に訴えるような処置もアリだな!→深く思い出そう とするとひどい頭痛がする段階に俺と激突 そんな流れでした。 洗脳が完了したら本編みたいになります。なんか説明不足でつらい(´・ω・`)

拉致った側も維持コストは当然考えるでしょうし、電気処理+薬品投与→強力な薬品のみの投与→現在の薬品の投与って感じで、コストを削っていった 脳内設定があります。

マップは今の戦場だから、散発して試験的な戦闘があったとでも思ってくださると助かります(´・ω・`) 本家に詳細な設定聞かれると困るわwww

Fairyから一言

 「剣聖」と謳われる、某マイミクさんから許可を得て転載しました。呂布が本家よりカッコいいですwww← 魔剣の間合いと遠雷竹槍の戦いぶりが本当にダイナミックで羨ましいぐらい!www 呂布を大切に扱ってくれた上に、こんなにも素敵な作品に仕上げて頂き、感謝しています。ありがとうございました。

 あ。下のおまけは本人からのものです(笑)

おまけ

フィオナさんが人気のようなのでおまけ:

「おぅ、フィオナさん。悪いねぇ、タクシーみたいにヘリ使って」


マグメルのシステムオペレータ、フィオナさんに礼を言う。

《そんな事はどうでもいいんです!一体何をどうしたら、堅固なブラストランナーをあんな状態にできるんですか!もっと大事にしないと、ブラストを 棺桶にでもしたいんですか!?》

どうやらご立腹の様子。

「まさかフィオナさんに『死ね』って言われるなんてねー、ショックだよ」

できるだけトーンを落として言ってやると、あたふたとした声で慌てて返事が飛んできた。

《な、ななな何でそうなるんですか!誰もそんなこと》

遮るように言葉を続ける。

「こうしなきゃ生き延びれない、そんな戦況はザラにある」

《…ごめんなさい。今のは私が悪かったわ。とにかく自分を大事にしてください》

しょんぼりした声で返ってくる言葉を堪能して、「いいよ、別に」と怒ってないことをアピールしておく。

「いやー可愛いとこもあるもんだね、フィオナさんも♪」

《何ふざけてるんですか!》

「だって結局は俺の事を心配してくれてるんでしょ?」

《会社のためです!もう、知りません!!》

「はいはいそういう事ですよね分かります(棒読み」

《いい加減にしないと、落としますよー!?》

ブラストが傾く。
輸送機ほど安定しないのは、結構ブラストが無茶な重量だからだ。

「わっ、ちょっと!落とさないでー!」

パイロットは「高密度ニュード資源回収」の名目で、半ば強制的に連れてこられた事を最後まで言い出せなかった。

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