闇夜に独り俺はたたずんでいた。
ただ黙ってある場所を見つめていた………。
リックス───俺の故郷。
だが、今は………。
───もう何もない。
村の人々も俺の家も想い出も全て………。
全てが無の彼方へと消えてしまった。
大切なものを何1つ守れなかった自分。
───俺は無力だ。
何の力も無い。
………ただの旅人に過ぎない。
───!?
何かの気配がして、咄嗟に俺はグレートソードを抜いた。
「………ファリス」
「全く、物騒なやつだな。オレだって気がつかなかったのか!?」
「悪い」
剣を鞘に戻しつつ、俺はファリスに謝った。
「………隣、座ってもいいか?」
「………ああ」
俺は努めて平静を装う。
ファリスは暫くの間沈黙していた。
俺と同じようにただ水平線を見つめて。
「あのなぁ、バッツ」
「ん? 何だ」
「辛いのは何もお前だけじゃないんだぜ。───レナもクルルもそしてオレも。リックスが、世界が崩壊していく様を見て………無力な自分がもどかしくなる」
「………………」
俺は目が滲んできた。
そうだった。
レナは父親を、クルルはガラフを、そしてファリスは───。
親友であるシルドラを。
「泣きたい時には泣けよ。お前が前に言ったことだぜ。泣いて泣いて泣きまくった後───」
───強くなればいい───
ファリスの声が俺の頭の中で谺する。
「………ファ………リス]
俺だけじゃない。
辛いのは。
これ以上………誰かが悲しむのは絶対に嫌だ。
「リックスはオレが必ず取り戻してやる。だから………1人でそんなに何でも背負い込むなよ」
「………ああ」
でも、それが俺の限界だった。
涙が洪水となって俺の頬を伝う。
泣きじゃくる俺をファリスはそっと抱き寄せた。
俺は………ずっとこうしてもらいたかったのかもしれない───。
俺はファリスの細い腕の中でずっと泣いていた。
後書き
これはサイト開設記念を兼ねて流字様に捧げたものです。実を言いますと、テスト期間中にパッとシチュエーションが思いつきまして。夜遅くに親に怒られながら書き上げたものなんです(爆)しっかしまぁ1人称、下手(3人称が上手いわけでもないけど)ですね、私(大汗)こんなのを人様にあげちゃってよかったものか………(ー。ー)