75 涙

 闇夜に独り俺はたたずんでいた。
 ただ黙ってある場所を見つめていた………。
 リックス───俺の故郷。
 だが、今は………。

 ───もう何もない。
 村の人々も俺の家も想い出も全て………。
 全てが無の彼方へと消えてしまった。

 大切なものを何1つ守れなかった自分。
 ───俺は無力だ。
 何の力も無い。
 ………ただの旅人に過ぎない。

 ───!?
 何かの気配がして、咄嗟に俺はグレートソードを抜いた。

「………ファリス」
「全く、物騒なやつだな。オレだって気がつかなかったのか!?」
「悪い」
 剣を鞘に戻しつつ、俺はファリスに謝った。
「………隣、座ってもいいか?」
「………ああ」
 俺は努めて平静を装う。

 ファリスは暫くの間沈黙していた。
 俺と同じようにただ水平線を見つめて。
「あのなぁ、バッツ」
「ん? 何だ」
「辛いのは何もお前だけじゃないんだぜ。───レナもクルルもそしてオレも。リックスが、世界が崩壊していく様を見て………無力な自分がもどかしくなる」
「………………」
 俺は目が滲んできた。
 そうだった。
 レナは父親を、クルルはガラフを、そしてファリスは───。
 親友であるシルドラを。
「泣きたい時には泣けよ。お前が前に言ったことだぜ。泣いて泣いて泣きまくった後───」

───強くなればいい───
 ファリスの声が俺の頭の中で谺する。
「………ファ………リス]
 俺だけじゃない。
 辛いのは。
 これ以上………誰かが悲しむのは絶対に嫌だ。

「リックスはオレが必ず取り戻してやる。だから………1人でそんなに何でも背負い込むなよ」
「………ああ」
 でも、それが俺の限界だった。
 涙が洪水となって俺の頬を伝う。
 泣きじゃくる俺をファリスはそっと抱き寄せた。
 俺は………ずっとこうしてもらいたかったのかもしれない───。
 俺はファリスの細い腕の中でずっと泣いていた。

後書き

 これはサイト開設記念を兼ねて流字様に捧げたものです。実を言いますと、テスト期間中にパッとシチュエーションが思いつきまして。夜遅くに親に怒られながら書き上げたものなんです(爆)しっかしまぁ1人称、下手(3人称が上手いわけでもないけど)ですね、私(大汗)こんなのを人様にあげちゃってよかったものか………(ー。ー)

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