アイツは何かしら私に言い寄って来る。
軽薄な男は私が1番軽蔑すべき相手。
アイツだって例外なんかじゃない。
「あれ〜、ゼシカちゃん。もしかして妬いてんの?」
「アンタなんかに嫉妬する方がバカバカしいわよ!」
そう、思っていたのに…。
気付いたらアイツの一挙一動を目で追っているの。
「でも、オレはゼシカが本命なんだぜ」
「はいはい。その気障な物言いと毎日女の子と遊んでいるのを止めたら考えてあげるわよ」
言葉とは裏腹にアイスブルーの瞳が淋しさを讃えているのは私の気のせい…?
「ぁ」
「何だよ」
「あとさ───」
思い当たって、私はククールの方を振り向いた。
「私の前だけでも、少しは弱いところ見せなさいよ。これでも、心配してんだから…」
ククール、笑って。
そんな顔するのは卑怯よ。
後書き
ちょっぴりククールの事が気になって仕方ないぜシカちゃんを書きたくて書いたらこんな感じになりました(笑)
「なぁ…ゼシカ」
「なぁに?」
私はククールに後ろから呼び止められた。
「いや…やっぱいい。何でもねぇ」
「何よ、呼び止めておいて」
呼び止めたのは、彼。なのに、それは無いんじゃないの? そんな風にちょっと拗ねてみる。
「忘れろ。大した事じゃない…から」
心無しか、いつものククールじゃないような気がした。何て言うか…こう、ちょっと浮ついた感じかな。
それが少し気になった。けれど、上手い言葉が見つからなくて。
ねぇ…ククール。私はあなたが思っている事は何でも受け止めてあげたいんだよ。
だから、お願い。どうか、その先を言って…。
後書き
母性本能が働いたゼシカってこんな感じかな。何だかんだ言っても優しい女の子なんです。
私は見てしまったの…ククールの身体に酷い痣があるのを。
ねぇ、どうして何も言ってくれないの?
そうやってずっと身体も心も傷を抱えたまま生きていくつもりなの…?
「酷い…これは………」
「ゼシカ…」
涙が一筋、頬を伝った。ククールのはだけた上着から見える痣が酷く…痛々しかった。
「やっぱりゼシカは泣くんだな…だから…ゼシカには知られたくなかった」
ククールの何処までも冷たい氷のような瞳に私は苛立ちを覚えた。
当たり前よ…こんな事が許されるわけ無いじゃないっ…!
けれど、それは声にならなくて…。
ただ、気付いたらククールを抱き締めていた………。
後書き
「03 この胸の奥、秘められた過去」の対になるお話。ゼシカ嬢は曲がった事が大嫌いな人だからってのがこの話の根底にあるイメージです。
あんなに傷だらけなのに…何で引き止めないの…?
やっとアンタ達だって分かり合えそうだったのに。ククールの望んでた事が実現しそうだったのに。
自分から手放してしまって良かったの…?
「ククール…あのイヤミを引き止めなくて良かったの…?」
「引き止めたってムダさ…アイツはそーゆーヤツだぜ」
至って軽い口調でククールはそう言った。けれど、彼の雰囲気がいつもと違った…何となくだけど。
私はそれが何を意味してるか分かってる。
ねぇ…ククール。アンタはそれでマルチェロを気遣ってるつもりなのかもしれないけど、それは酷過ぎるわ。
だから、今はたとえ無理でも…いつかちゃんと向き合おうね、一緒に…。
後書き
このタイトルを見て1番最初に思い出したのがマルチェロとの戦いの後のククールの態度。それを見ていたゼシカの優しさを書きたくて起こしたショートショートです。