ツインテールがよく似合う、少し勝ち気でオレ好みの女の子。
何かにつけてオレに構ってくるあの女の子。
本当の気持ちをぶつけたらどうなるか?
いや、言わなくても分かっている。
だから、本気にはなれない………拒否されるのが怖いから。
「あれ〜、ゼシカちゃん。もしかして妬いてんの?」
「アンタなんかに嫉妬する方がバカバカしいわよ!」
だから、つい茶化してしまう。
「でも、オレはゼシカが本命なんだぜ」
「はいはい。その気障な物言いと毎日女の子と遊んでいるのを止めたら考えてあげるわよ」
相変わらず、手厳しい。
しかも、無理矢理触れようものなら有無を言わさず火の玉が飛んでくる。
「ぁ」
(…ん?)
「何だよ」
「あとさ───」
振り向き様に彼女はオレを見る。先程までとは違う、優しい笑みで。
「私の前だけでも、少しは弱いところ見せなさいよ。これでも、心配してんだから…」
………いや、それはできないさ。
だって、光の道を歩いてきた君に闇の世界を知る必要はないから。
後書き
ククール視点っていいですよねぇ。何だかんだ言ってもゼシカの事を大切にしていそうで羨ましい(マテ)
ゼシカが兄を慕う気持ちをオレは疎ましく思う事がある。
………けれど。
本当は…羨望の気持ちの裏返しだ。
でも、それを彼女には知られたくない。いずれはバレてしまうだろうけどな。
だいたい考えてみろよ。そんな曲がった感情を抱いていると知ったらゼシカがどんな反応をするのかをさ。
彼女はとても真っ直ぐで純粋だから、きっとオレの事を軽蔑するだろう。
それが…1番怖い。
「オレはゼシカに知られたくない事ばかりだな」
「───何が知られたくないって?」
うわっ…ゼシカ、いたのかよ。
「い、いや…何でもない」
「あら、そう。言わないのなら、こっちにも考えがあるわよ」
怖いくらいの笑顔にオレはたじろいだ。そして可能な限りゼシカと距離を取ろうとする。
「あ、ちょっと…待ちなさいよっ!」
待てるもんか。待ってたら、命が幾つあっても足りねぇ…。
オレは胸中で毒づいた───。
後書き
ちょっとギャグっぽく。Fairyはギャグは専門ではないのでこれが精一杯です。
「ゼシカちゃん、無断で男の部屋に入るなんてはしたないぜ」
「うるさいわねっ!」
ゼシカはいつものように顔をプイッと背ける。
そんな表情が堪らなくてオレはいつも彼女を軽くいじめる。
「愛しのマイハニー。オレと熱い熱い夜を過ごしたいのかい?」
「ああ、もういいわっ! 誰がアンタなんかと〜〜〜っ!」
最後の方は言葉になっていない程、羞恥に顔を真っ赤に染めたゼシカ。
それを見ていて悦んだりしているから、オレはエイトにククールはサドだね、と言われるんだろうな。
でもさ、ゼシカには急にオレの部屋に入って欲しくないんだ。
このオレの傷まみれの身体を見たら、きっと優しい彼女はオレの為に泣いてくれるだろう。
だからこそ、この身体に刻まれた…アイツのオレに対する憎しみの傷痕を彼女には見られたくはないんだ。
後書き
私的設定ではククールはマルチェロからの拷問の傷痕が残っていると思いまして。ゼシカって真っ直ぐだからそういうのが許せなそうだし。
オレが本気…。
自分でも信じられない程に。
「ゼシカ」
「何よ?」
彼女は頬を膨らませた。まるでオレの声色に反感を持つかのように。
「いや、何でもない」
「もうっ、何なのよ」
………言えない。
言ってしまえば君はきっとオレから離れて行ってしまうから。
この、微妙な均衡を破るのが怖いのかもしれない。
だから、本当に好きな彼女に対してはどうしてか奥手になってしまうんだ。
後書き
うちのククールは奥手。端的に表してみました。