オレ達は薬草園にグラッドとかいう奴を探しに行く事になった。薬草園はオークニスの更に北にあるらしいのだが、吹雪が強いのと雪山地方独特のモンスターに手こずって中々思うように進めなかった。
中でも厄介なのがキラーマシン。おっさん…もといトロデのモンスターデータによればDr.デロトとかいう奴が創った機械人形らしいが…やれやれ、こんなの創る奴ってのはどうせロクな奴じゃねぇな。
「何体いるんだ…うわっ!」
「エイト! 大丈夫?」
連続攻撃を仕掛けられたエイトが吹っ飛ぶ。そう、こいつは1回に2度攻撃してくる。剣だけならともかく、弓矢による攻撃が痛い。剣だけなら前衛のエイトとヤンガス、それから中衛のオレで持ち堪えられる。しかし、弓はゼシカにまで危険を及ぼしてしまう。
「今度はビームの嵐かよ!」
ビーム攻撃は更に厄介な事に全体攻撃だった。
「ベギラゴン!」
対抗してゼシカが最近覚えたばかりのギラ系最強呪文を唱える。が…しかし。
「まずい! 雪崩だ!!」
オレは咄嗟にゼシカを庇った───。
「…ちっ。何とか助かったはいいが…エイト達とはぐれちまったな…」
ゼシカはまだ目を覚まさない。オレは不安になって彼女の腕を取る。
…脈はどうやら安定しているらしい。
辺りを油断なく警戒する。…すると、遠くでダースウルフェンとおぼしき咆哮が聞こえた。
…まずいな。取り敢えずここを離れるか。
ルーラを使おうにも今の状況では逆に彼女の身体に大きく負担を掛ける。従って、この状況では徒歩で移動するしかなかった。
くそっ…吹雪いてきやがった。
と、そこに運良く洞穴を見つけた。オレはすぐにその奥へと入り込んだ。中は意外と深く、取り敢えず寒さは凌げそうだ。
オレは適度なところに腰を下ろし、ゼシカを抱えるように引き寄せた。
冷てぇな…こいつ…。
オレはゼシカの腕に傷があるのを見つけ、すぐにベホイミを唱えた。
本当はベホマで全快させたいところだが、彼女の体力自体が極度に落ちている今、代謝能力を活性化させて身体の組織を治すホイミ系の呪文は逆に身体を悪化させかねない。特に最上級呪文であるベホマは危険だろうと思い、オレは敢えてベホイミで止めておいたのだが。
「ぅ…ここは…? きゃっ!///」
意識を取り戻すや否や、ゼシカはオレの腕の中で暴れた。しかし、オレは放さない。
やがて抵抗するのを諦めたゼシカがぽつり、蚊の鳴くような声で言った。
「ごめんなさい…。私が呪文をちゃんと扱えなかったから…」
「大丈夫だって。そんなに神妙な顔をするな」
らしくない顔だ…。
少しでもゼシカに元気を出して欲しかったから、オレは彼女を慰めた。
「…にしても寒いわね。それに、何だか…眠い………」
「ゼシカ! 寝たら凍死するぞ」
オレにもたれ掛かってくるゼシカ。その目はトロンとしていて、焦点が合っていなかった。
「…んっ…」
どうしてだかオレにも分からなかった。ただ、気が付いたらゼシカの唇をこれでもかと言う程激しく奪っていた。
「………ちょ、ちょっといきなり何すんのよ、アンタはっ!!」
「こうすれば眠くならないだろ。オレが…温めてやるよ」
もぅっ、とゼシカは嘆息した。がしかし、彼女は厭わなかった。
オレはゼシカの身体を抱きかかえ直すとゆっくりと彼女の頭を撫でた───。
「おーい、ククール! ゼシカー!!」
遠くからエイトの声が聞こえてきた。それに乗じてオレ達も洞穴から出ようとした。
「何やってんだよ、ほら」
「…もぅ。アンタってばやっぱりサイテー…///」
そう言いながらも差し出した手を拒まず掴んでくれるゼシカがやっぱり可愛くて仕方なかった。
願わくば、このままずっと彼女といられますように…。
思わず、そう願ってしまう程に───。
後書き
季節先取りなネタですが、いかがでしたか? 今回は少々短かめのお話です。しかもベタベタ過ぎる設定です(笑) 男性ってよく分かんないところに女性の可愛いさを見い出すみたいだと、最近思うFairy(マテ) まぁ、ゼシカ嬢は外見からしてとても可愛いのですが…;; 私の設定ではファンタジーに共通して言える事なんですけど、治癒呪文(魔法や特技も)は基本的に代謝能力を活性化させる事で回復させるという定義になっています。だから元々の体力が極端に減っている時にそれらは使えないのです。ゲームでは瀕死になったらすぐに回復させて全快、なんて事も出来るけれど、小説でそれをやってしまうと面白くない。だから呪文や魔法を使う時は制約を設けたりして、使う時にはかなり気を配っているつもりです。そしてそして、最後の方のゼシカちゃんが抗議した後…どうなったのかは内緒ですvvv(マテ)
プロット※要反転
ククール1人称。
雪山地方にて。敵はキラーマシン。戦闘中にキラーマシンが集中してレーザーを放つ。対抗してゼシカがベギラゴンの呪文を唱える。
雪崩が起き、ククールがゼシカを庇う。エイト達とははぐれる。ゼシカ気絶。ククールはダースウルフェンの気配を察知して隠れる場所を探す。
ククール(くそっ…吹雪いてきやがった)
運良く洞穴を発見。中で座ってゼシカを抱き締める。同時にゼシカの足に傷があるのを見つけ、ベホマを掛ける。ククール、ゼシカの身体が思いの外冷たい事に気付く。
ゼシカ「ぅ…ここは…? きゃっ!///」
ゼシカ慌ててじたばた(笑) しかし、ククールは放さない。
ゼシカ「ごめんなさい…。私が呪文をちゃんと扱えなかったから…」
ククール「大丈夫だって。そんなに神妙な顔をするな」
ゼシカ「…にしても寒いわね。それに、何だか…眠い………」
ククール「ゼシカ、寝たら凍死するぞ」
思い立って、ゼシカの唇にククールは自らの唇を重ねる。ゼシカ、抗議。
ククール「オレが…温めてやるよ」
エイト達の声が聞こえてくる。ククールはそ知らぬ顔で、ゼシカは滅茶照れ顔で(笑)